top of page

ステートメント&プロフィール

五百蔵由季 (いおろい ゆき)

IOROIは「言葉 / テキスト」を主軸とした表現による絵画作品、半立体作品を制作。

それらのテキストは人間の心理や行動から主に着想を得た構成となっており、言葉や文章を提示された時に読み始めてしまうという人間の普遍的な衝動と、言語特有の「伝える」という機能を活用しながら、人間の自己認識や顕在意識に対して疑問を投げかけている。

神経科学者の研究によると人間は1日に約5万~6万回思考するが、そのうちの90%は昨日と同じ内容だと言われている。それが意味するのは、同じ思考は同じ感情を生み、同じ行動を取らせ同じ結果を招くというサイクルに陥ることであり、無意識に繰り返される思考から習慣的に発せられる言葉は、暫しネガティブな要素を含んでいると推察される。

 

現代社会においてそういった言葉は軽んじられ誤用されることも多く、他者や自身の心を傷付けたり殺すこともできる強烈な力となって存在している。しかし、私たちが言葉を意識的に上手く使うことを選択することによって、自身を取り巻く環境の変化を待つのではなく、自らの思考の癖や思い込みで見ている現実を柔軟に変化させるプラスの力として活用することもまた十分可能だと考えられる。

 

半立体の作品の中でテキストを印刷した紙を言語の迷路のように立体的に重ねたり、平面作品では何度も同じ言葉をステンシル技法によって描くことで、人間が思考を元に脳内で発する言葉、

 ‘’セルフトーク’’ の「繰り返し / リピート」を象徴している。また、その「繰り返し」によって形成される無意識のサイクル、反復による会得、意識的な選択による習慣化など、感情や行動として現れる結果を表現。作品の持つメッセージ性の輪郭をテキストによって視覚的に鮮明にすることで、鑑賞者と作者の共有可能なコミュニケーションツールとなり作品と対峙する者を議論の場へと誘う。

 

1960年代以降アート界で確立されていった、テキストベースアートやワード・アートと呼ばれるアーティストたちの作品では、政治や戦争や社会悪への疑問の声、格言めいた言葉、作家の私的な経験からの告白、または植え付けたメタファーは特に無く鑑賞者側に意味を付加させるものなど、様々な言葉の表現が成されている。人目に付かせるためにポスターや電光掲示板、建造物など敢えてパブリックスペースを利用したスタイルの作品も多い。そして、主にそれらは既に起きている事柄に対する言葉や、存在している事象から着想を得た言葉で構成されている。

 

しかし、現代はソーシャルメディアの浸透によって、誰でも個人が共有空間へのアクセスや他者への介入、情報発信が可能な時代となり、絶えず陳腐な真実や流麗な嘘が氾濫している。そういった中で、起きている事柄や存在している事象を対象としたテキストベースアートに、何か強烈に作用するほどの効力が果たして今でも期待できるのだろうか。そういった疑問からIOROIの作品は、溢れ続ける外側の事象へのフォーカスではなく、それらに晒され続けている現代人が、目にするもの聞いたものに翻弄されない生き方を確立するため、また、見失わないためにはどうすれば良いのかという点に着目し、個人個人の内側に直接作用し得るメッセージ性の追求に重きを置いている。

 

現実や真実とは何なのか。見ている世界を信じているのか、それとも信じている世界を見ているのか。無意識の日常の深層部に対して意識を向ける問いを作品を通して提起している。

1980   静岡出身

2001 渡米。L.Aにて2年間の留学

2007 東京阿佐ヶ谷美術専門学校、イメージクリエーション科卒業

2011 渡英。ロンドンを拠点に本格的に活動開始

2013 東京に拠点を移し国内にて初個展

2014 東京デザイナーズウィークのアートフェア(TDW ART FAIR) にてロンドン芸術大学副学長から審査員特別賞を受賞

2015 アートフェア東京やKIAFなど国内外のアートフェアに出展

2016   オランダに拠点を移す

2019 国際アートコンペティション Aesthetica Art PrizeのThree-dimensional and Design部門にて入選

2023 帰国し静岡を拠点に現在に至る

 

※展示歴はExhibitionページをご覧ください

 

bottom of page